いろいろな教科書にあると思いますが、講義でよく用いるので、私の好きな書き方で証明してみました。「を内積空間とする。Hilbert空間があって、はの稠密な部分空間と等長的同型になる。このような(の完備化)は同型を除いて一意に決まる。」。下記の証明では、実数全体は有理数からなるCauchy列の集合の同値類(同じ値に収束するCauchy列どうしを同値とする)と読み替えることができます。
とその内積を定義
体上の内積空間のCauchy列全体を、の同値関係を ()とし、その商をと書くものとします。そして、のクラスをと書くと、, について、, , が成立し、は線形空間となります(クラスの代表元によらないことはお確かめください)。また、における内積をで定義します。右辺の極限が存在し、その代表元によらないことは、以下のように示せます。に対して、よりはCauchyで、したがって有界です。そして、Cauchy列に対して、が成立し、実数列は収束します。また、, のとき、
より、代表元のとりかたによらないことがわかります。
はで稠密
次に、をで定義すると、を満たすので等長写像です。の像は、で稠密でもあります。実際、について、は、さらに、はCauchyであるので、で右辺は0となります。すなわち、, , , がに収束します。はの任意の要素ですから、はの稠密な部分空間であることが示せました。
は完備
最後にの完備性を示します。について、がCauchyであると仮定します。内積の定義から、であり、がCauchyであるので、任意のについて、ある正整数があって、とできます。また、とできるので、はのCauchy列となります。特に、, が成立します。したがって、においてを十分大きくとると、右辺を十分に小さくできます。したがって、で、が示されました。