行列を特異値分解してと書くものとします。ただし、 , , とし、が成立し、は対角行列でその各成分(特異値)は非負の値をとります。このとき、とできます。また、正方行列のトレースは、の特異値の和で常に非負になります。の成分は、とかけるので、のトレース(対角成分の和)はとなります。トレースというとのときのをさすことが多いですが、関数解析では、のことをトレースノルムといいます。両者は非負定値対称のときに一致し、特異値は固有値になります。
同様の概念を一般の線型作用素にも適用できます。線型作用素のについて、と書いて、と書きます。は作用素の平方根でと呼ばれるものです。トレースノルムがが有限のときその作用素はトレースクラスであるといいます。そして、自己共役のときにをトレースといい、さらに非負定値のときにトレース、トレースクラスは一致します。「機械学習のためのカーネル」の第2章の最後のトレース作用素の箇所では、自己共役かつ非負定値の線型作用素のみを扱っていて、両者は一致します。